バベロンの塔の待ち人

バベロンの塔の待ち人

僕は、今年から東京の私大に通う大学1年生です。

名前は、裕貴といいます。親を説得して、一生懸命勉強してやっと都会に出てきました。

大学がはじまって、2週間ほどたって、仲のよい友達が出来ました。

彼の名前な麗人といいました。とても気さくで社交的で、入学してすぐに友達になりました。

麗人は、髪がさらさらで僕とは違ってイケメンでしたので、講義が終わったら、LINEの交換をいろんな女子にせがまれていました。

そんな麗人も誘って、サークルに入ろうと、気持ちも落ち着いてきた2週間後にサークル塔へ行きました。

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サークルごとに部室ならぬサークル部屋がそれぞれ与えられていて、そのサークルの部屋が集まっている所は、建物が古く、塔のように見えるので、「バベロンの塔」というネーミングが自然と付いていたのです。

麗人と僕はバベロンへ行き、「演劇サークル」の門をたたきました。

「演劇サークル」は歴史が古く、ここの大学から有名な俳優を輩出するなど、名物的なサークルでした。

入ってみると、古臭い部室で、お世辞にもあまりきれいでない畳がひいてあり、壁には歴代の先輩が書いたのかよく分からない落書き、演劇の小道具で使われたであろうよく分からない被り物や、張りぼて、布団が何セットかつんでありました。

女子部員が2人出迎えてくれました。

部員は4年生で、「今年は、就職活動であまり出られないので、宜しくね」と僕らに伝えて入部届けを受け取ってくれました。

そのあと、世間話を部室の缶ジュースをみんなで飲みながらしていると、一人の先輩が「ここ、出るから気をつけてね」と冗談交じりに話してきました。

僕は、「でるって?」と聞きました。

「昔、バベロンで自殺した大学生がいて、恋人に振られた腹いせに、首吊りしたってうわさがあるんだよ。

長い髪の女の人だって。

だから、恋人に似た男の子が来ると、憑依して、道連れにしようとするんだって。

まあ、よくある噂だよね、冗談だから気にしないで」と言われました。

あまり霊感もない僕は、笑ってその場をあとにしましたが、麗人が無口になったのが少し気になりました。

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それから、サークル活動に参加するようになりました。

麗人も参加していました。

夜遅くまで、新入生が主人公の舞台の稽古をしていて、その日は、みんなで部室に泊まることにしました。

コンビニで食料をたくさん購入して、部員たちは、わいわいと宴会をしていました。結構、みんな自由行動です。

演劇サークルは、練習場が同じバベロン塔にあります。

麗人は、「まだ少し練習したいから、先にいってて」と僕と新入生に伝えて、練習場へ行きました。麗人は、とても熱心で、この新入生の演劇の主人公のライバル役でした。

台詞が多いからなと僕は思い、「あとから俺も行くね」といってみんなの食事を部室で取りました。

1時間ほどして、様子が気になって僕は麗人を観にいきました。

麗人は、ステージの端にたって、誰かと話していました。台詞の練習をしているかと思って、声をかけましたが、僕の声が聞こえない様子で、ずっと話しています。

「麗人?麗人?」と様子がおかしいので、大声で叫んで、僕もステージに上がり、駆け寄ると、麗人が気を失って僕に倒れ掛かってきました。

その直後、練習場の電気がバチッと飛んで、停電し、冷たい空気が流れました。

そして女の人の声で「どけ、どけ、どけ」っと低い声で耳元でささやかれました。

僕は、あわてて腰が抜けました。でも麗人を置いていくわけには行かず、「やめて、この人は違うから」と力いっぱいの声で言い放ちました。

しばらくすると、電気がついて、空気が一変しました。

あとで、麗人からそのときの話を聞くと、練習場に行く前から記憶がないそうです。

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