出られない図書室
私は田舎にある高校に通う普通の女子高生だ。
田舎とは言っても大都市ではないという意味で、住宅街や大きなデパートもあるそこそこ大きな街ではある。
私の通う学校は住宅街の合間のような場所に建てられている学校で、あまり頭の良くない普通科の学校だ。
共学校で勉強よりも彼氏やバイトが生活の中心にあるような生徒ばかりのいたって普通の学校。
小学生や中学生の頃はあんなに話題にしていた、都市伝説や学校の七不思議なども、高校になるとほとんど興味はなくなっていた。
周りの友人達にもそういった話をする人はいなく、この学校にはオカルト的な噂はないものだと思っていた。
だが高校2年の時、唐突に学校に七不思議のような噂が流れ始めた。
みんな少年少女時代を思い出したのか、けっこう興味津々でその話題でもちきりになるほどだった。
しまいにはコックリさんなどをするグループも現れ始めもした。
今考えると怪談話を利用して男女でイチャイチャしたいだけだったのだろう。
昔から存在する噂話から、誰かが流行りに乗って最近作ったような話まで、いろいろな話があったのだが、私はある一つの話が気になっていた。
いや、私だけじゃないほとんどの生徒が一番気になっていた思う。
「深夜12時に図書室の入ったら、朝まで出てこられなくなる。」
という噂話である。
二度と出てこられない、という話ならけっこうありがちな怪談かもしれないが、朝まで出ていこられない、というのが気になる。
「朝には出られるんかい!」と怖くないんだか、逆に怖いんだか良くわからない話で、私達の好奇心を刺激してきた。
ある日、クラスの男子のカズオから、この噂話を試してみようと誘われた。
計画はこうだ。体育館倉庫の窓はたくさんの荷物に阻まれているから、ちゃんと戸締まりを確認していないようなので、そこの窓の鍵を昼間の内に開けておき、夜中そこから侵入する、という計画だ。
男子のコージとタカシと計画したようなのだが、女子も誘おうということで、私を誘ってきたらしい。
そしてマイとカヨコも誘ってくれないか、というもだった。
マイとカヨコを誘って、その日の深夜11時待ち合わせ場所の学校前の公園に向かった。
マイとカヨコも誘ったらノリノリでついてきた。
それもそうだろう、マイはコージが、カヨコはタカシのことを好きだったからだ。
11時ちょっと過ぎに公園についたのだが、誰もいなかった。
「遅いねー、寝てるんじゃないの?」
なんて話していたら、カズオ、コージがやって来た。
カズオ「窓確認してきたけど、バッチリ開いてたwww」
どうやら窓は開いているようだ。
遅れてタカシがやって来て、みんな揃った。
タカシ「ごめん、ごめん、遅れた」
コージ「遅せーよ。まあいいや、みんな揃ったし行こうぜ!」
コージを先頭にして、体育館倉庫の窓へ向かった。
一応一通り学校の周りをぐるりと周ってきたが、先生はもとより誰もいないようだった。
体育館倉庫の裏は確かに開いており、そこから学校内に侵入した。
住み慣れたはずの学校だったが、真っ暗な学校内は普段をはまったく違う雰囲気を醸し出していた。
用心をして懐中電灯も点けないで進んでいるの相当暗い。マイとカヨコも私と同じくらい怖がってるようだった。
マイ「やば、怖いんだけど」
カズオ「なんだよ。楽勝だからwww」
女子達とは違い男子達は余裕だった、たぶん強がっていただけだが。
4階にある図書室にはすぐに辿り着いた。
ドアを開けようするコージだったがドアが開かない。
鍵がかかっているようだ。
冷静に考えたら当然だ、鍵がかかっていないはずがない。
諦めて帰ろうする私達だったが、カズオだけはドアを開けようとがんばっていた。
コージ「無理だよ。置いてくぞ!」
カズオを置いてコージが帰りだした。
なんだかシラケてしまった他のメンバーもコージに続いた。
その瞬間
カズオが「鍵発見!これ図書室の鍵じゃねーの?」
なんとカズオが地面に落ちていた鍵を発見したというのだ。
ダメ元で図書室の鍵穴に指してみると、鍵が開き図書室に入ることができた。
みんなまさかの展開にテンションは上がりまくりである。
タカシ「マジかよ!奇跡!」
カヨコ「カズオのしつこさまでウケるんだけど」
カズオ「・・・・・」
みんな恐怖心もありながらも、奇跡的な展開に盛り上がって、図書室の中を進んで行った。
図書室の奥まで行って気がついたのだがカズオがいない。
私「あれ?カズオは」
コージ「は?本当だいない。おい!カズオ!」
大声で読んでみたのだがカズオからの返事はなかった。
カズオを探して入り口に戻ってみると、図書室の外にカズオがいた。
マイ「ちょっと脅かさないでよー」
とドアに手をかけたのだが、ドアが開かない。
カズオが外側から鍵をかけたようだ。
内側からは鍵を開けられない作りになっていて、閉じ込められてしまった。
コージが「もうわかったから出してくれ!」
コージが言った瞬間カズオがドアの窓ガラスに張り付いてきた。
目を見開き、全員の顔を一人ずつ見つめていく、瞬きもせずに。
そしてドアに頭を打ち付け始めた、何度も何度も。
その異常さに完全にビビってしまい、怖くてカズオのこと見ることができず、どうしていいかわからなかった私達は図書室の奥に逃げました。
5人で肩を寄せ合ってガタガタと震え続けましたが、それでドアの音は聞こえ続けました。
外が明るくなってきた頃、突然ドアの音が聞こえなくなりました。
恐る恐る見てみるとカズオはいなくなっていて、やっと開放された私達は、走ってその場を後にしました。
それ以来カズオは行方不明になってしまい、現在も発見されていません。
あの日、カズオは図書室の鍵を拾ったのではなく、元々も持っていたのではないか、しかしなぜそんな事をしたのか、今でも何一つわかりません。