山道の女

山道の女

大学の授業が終わったあと、ゼミの先輩2人に誘われ、友人と私の4人でドライブに行きました。

「行き先はどこですか?」と聞いても勿体ぶって教えて貰えませんでした。

先輩たちは人をからかったり、イタズラするのが好きなので、少し、いや、かなりの不安を覚えつつ先輩達に任せ私と友人は車に乗っていました。

車はどんどん山道を進んで行きます。

進んでいくうちに段々と嫌な予感がしてきて、変なとこに行くのであれば行くのをやめて欲しいと友人と先輩達に掛け合ったのですが、先輩達に逆らえるはずもなく、結局引き返すことはありませんでした。

そんな山道の途中のカーブで友人が、

「ここ寮の先輩が事故で亡くなった場所だった気がする。カーブを曲がりきれずに落ちたらしい。」とボソリとつぶやきました。

聞いたとき、とても嫌な予感がしました。

私には霊感がありませんが、ホラーやお化け屋敷のような場所が大の苦手なのです。

目的地とは別ですが、目的地の近くにホラースポットがあり、多くの学生が恐怖を体験していました。

友人は寮生だったので、足首を捕まれ手形が残ったなど、噂をたくさん聞いていましたので、再度、先輩達に行くことを断固拒否するという意思表示をしましたが、丸め込まれ遂に目的地に到着してしまいました。

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目的地は、山道を10分ほど歩いた先にある鍾乳洞でした。

鍾乳洞はいいのですが、山道は凄く怖くどうにか歩かないで良い方法を考えましたが、すでに恐怖でいっぱいいっぱいで何も思い付くことが出来ませんでした。

若気の至りでした。

山道の入り口に通行禁止の看板が立っていたのですが、時間的な規制だったので看板を無視し鍾乳洞に向かいました。

山道は真っ暗で、携帯の明かりを頼りに先輩と友人にくっつきながら歩きました。

5分ほど歩いた頃でしょうか、はっきりと聞き取れませんでしたが耳元で女性のささやく声が聞こえました。

怖くて怖くて気のせいなのかどうかを考える余裕もなく、とにかく皆にくっついて離れないよう必死に歩いて、ようやく鍾乳洞へ到着しました。

10分ほどの時間が1時間にも感じました。

鍾乳洞に入ると、中は驚くほど清々しく、さっきの恐怖心も少し小さくなり、少しスッキリした気持ちで車に戻りました。

車に乗ってホットしましたが、山道でのことが気になり、皆に女性のささやくような声が聞こえたことを伝えました。

やはり、私の気のせいではなく、先輩2人も同様の声を聞いていました。

友人は怖すぎて耳をふさいでいたので聞いていませんでしたが、気のせいではなかっことに驚き皆で顔を合わせ、声を出さずとも全員一致ですぐに帰宅しようということになりました。

先輩の1人は、少し霊感があるらしく、山道で感じたことを教えてくれました。

女性の声が聞こえたことも事実だし、私たちが山道を歩いている間ずっとついてきていたそうです。

ただ、鍾乳洞の入り口でいなくなったから言わなかったと教えてくれました。

聞こえた声が勘違いでないことがわかり、霊感のない私にも聞こえるほどの影響力に恐怖がよみがえってきました。

早く帰ろうと山を降りはじめ、例のカーブに差し掛かったところで、『パーンッ』という破裂音が聞こえてきました。

さっきの声のこともあり、タイヤが破裂したわけではなかったため、早く山を降りることが先決と色んな推測をしながら帰宅しました。

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それぞれがバラバラに帰宅したあと、一番家が遠く、霊感のある先輩から電話が掛かってきました。

その先輩の車は鍾乳洞に行った車とは違いますのでただの暇潰しだろうと考え、また、私も一人暮らしなのに恐怖体験をしたことで心細かったので電話で話をすることにしました。

後で電話にでるんじゃなかったと後悔することになりましたが。

「実は隠してたんだけど、手首に握られた後が着いているし、今も握られている感じがするんだよね。」

「えっ、それって例の女の人が付いてきてるってことですか?車運転してて大丈夫ですか?事故とかやめて下さいよ。」

「まあ、たぶん大丈夫。気にしないでいいよ。よくあることだし。」

とそんな会話をして、気にしないわけがなく不安と心配でいっぱいになりながら、その日は布団を被って何とか眠ることができました。

次の日、全員が無事に出会うことができました。

友人も私も思い出したくなかったにも関わらず、ドライブに使った車を点検に出した先輩から報告がありました。

聞きたいような聞きたくないような相反する気持ちで聞くことにしました。

「車のパワーウィンドが切れてて、取れない汚れがついていた。あのカーブと女の人はまた別なんかな?あんな切れかたするなんて考えられない。」

あの山には何かがいたのか、結局調べることはしませんでしたし、噂を広めることもしませんでした。

まさか、私がそんな経験をするなんて想像も出来ませんでしたし、二度と体験したくありません。

ホラースポットといわれる場所には二度と近づかないと誓いました。

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