
「あのとき別の道を選んでいたら、今の自分はどうなっていただろう」
そんなことを、一度も考えたことがない人は少ないのではないでしょうか。
進学、就職、結婚、出産、転職、人間関係。人生には、振り返るたびに気になる分岐点がいくつもあります。
大きな後悔ではなくても、「あのとき、もう少し違う選び方ができたかもしれない」と思う瞬間は、誰にでもあるはずです。
今回オーディブルで聴いた垣谷美雨さんの『リセット』は、そんな「人生をやり直せたら」という願いを、かなりリアルな手触りで描いた長編小説でした。
物語の主人公は、ぼんやりした不安や不満を抱えながら日常を送る三人の女性たち。
ある日突然、高校時代へタイムスリップし、もう一度人生をやり直す機会を手にします。
設定だけを見るとファンタジーのようですが、実際に描かれているのは、もっと現実的な迷いや葛藤です。
やり直したい人生は、本当に「理想の人生」なのか。
過去を変えれば、今の悩みはなくなるのか。
そもそも人は、もう一度同じ年齢に戻ったとして、今度こそ納得できる選択ができるのか。
そんな問いを、押しつけがましくなく、でも確かに胸に残るかたちで投げかけてくるのがこの作品の魅力でした。
この記事では、オーディブルで聴いた『リセット』の魅力をネタバレなしで紹介します。
「垣谷美雨のおすすめ作品を知りたい」
「タイムスリップものだけど、ちゃんと大人が読める小説を探している」
「オーディブルで聴くなら、最後まで飽きずに楽しめる作品がいい」
そんな人の作品選びの参考になればうれしいです。
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『リセット』はどんな話? “あの頃に戻れたら”を本気で考えさせる物語
『リセット』は、三人の中年女性が高校時代に戻り、それぞれの人生をやり直していく物語です。
日々の生活が極端に不幸というわけではない。
けれど、どこか満たされない。
小さな不満や不安を抱えながら、「こんなものか」と自分を納得させて生きている。
そんな三人が、ある出来事をきっかけに過去へ戻ります。
高校生に戻った彼女たちは、未来の記憶をうっすら持ったまま、もう一度人生の分岐点に立つことになります。
進学先、就職、恋愛、結婚、友人関係。かつて選んだ道をなぞるのか、それとも別の道を選ぶのか。
物語は、その選択の積み重ねを丁寧に追いかけていきます。
この作品の面白いところは、「高校生に戻って無双する話」ではないことです。
過去の知識があるから何でもうまくいく、という単純な展開ではありません。
むしろ、大人になった今だから見えることがある一方で、大人になった今でも簡単には答えが出ない問題がある。
その現実味が、この作品をただのタイムスリップ小説では終わらせていません。
オーディブルで聴いていると、三人それぞれの選択に自然と気持ちが引っ張られます。
「自分ならどうするだろう」と何度も考えてしまうので、聴いている時間がどんどん伸びていきました。
派手な事件が起こり続けるタイプの作品ではありませんが、そのぶん人生の分岐点にじわじわと向き合わされる感覚があります。
『リセット』が刺さるのは、過去よりも“今の自分”を見つめる小説だから
『リセット』を聴いていて強く感じたのは、この作品は「昔に戻れたら何をやり直したいか」を楽しむ話であると同時に、「今の自分は何に納得していないのか」を見つめる話でもあるということです。
人は、今がうまくいっていないと感じると、過去のある時点に原因を探したくなります。
あの学校に進まなければ。あの人と結婚しなければ。あの会社に入らなければ。
そう考えることで、人生の複雑さを少し整理したくなるのかもしれません。
でも『リセット』は、その単純化を許しません。
もし過去に戻れたとしても、新しい悩みは生まれます。
別の道を選んだからといって、すべてが理想通りになるわけではありません。
むしろ、選ばなかった道にも、選んだ道にも、それぞれの苦労や痛みがあることを見せてくれます。
このあたりが、垣谷美雨さんらしいところだと思いました。
読みやすいのに、甘い夢だけでは終わらない。
現実のしんどさや、人間関係の難しさ、社会の中で女性が背負わされがちな役割まで、しっかり物語に織り込まれています。
だからこそ、『リセット』は「過去を変えたい人」だけでなく、「今の人生にぼんやり違和感がある人」にも合う作品です。
今の選択が正しかったのか、自信が持てない。
頑張ってきたつもりなのに、どこか満たされない。
周りと比べてしまい、自分の人生がこれでよかったのか分からなくなる。
そういう感覚が少しでもあるなら、この作品はかなり響くと思います。
三人の人生と友情がいい。だから最後まで聴きたくなる
『リセット』の魅力は、「人生のやり直し」というテーマだけではありません。
三人の女性たちの関係性がとても良いのです。
それぞれ価値観も立場も違う三人が、高校時代をやり直す中で、改めてつながりを深めていきます。
ここがこの作品の大きな読みどころであり、オーディブルで聴いていても心地よかった部分でした。
もし主人公が一人だったら、もっと内省的で重たい作品になっていたかもしれません。
でも三人いることで、視点に幅が出ます。
ある人にとっては理想の人生でも、別の人にとってはそうではない。
結婚に何を求めるか、仕事に何を優先するか、家族との距離感をどう考えるか。
三人の違いがあるからこそ、「正解は一つではない」というテーマが自然に伝わってきます。
感想の中にあった「既婚・未婚の違い、年齢、学歴、性格など、さまざまな要因から捉え方が多種多様で、正解などないと思った」という言葉は、まさにこの作品の本質だと思います。
誰かの幸せが、そのまま自分の幸せになるわけではない。
世間で“成功”とされる道が、自分にとっても正解とは限らない。
それでも人は、自分なりの納得を探して生きていくしかない。
『リセット』は、そのことを三人の人生を通して静かに伝えてくれます。
そしてもうひとつ良かったのが、友情の描き方です。大人になると、友人との距離感も変わります。
昔のように毎日会うわけでもなく、それぞれの生活があって、価値観も変わっていく。
それでも、人生の大事な場面で思い出す相手がいることのありがたさが、この作品にはあります。
タイムスリップものとしてだけでなく、友情小説としてもかなり満足感がありました。
『リセット』はこんな人におすすめ|読むべきか迷っている人へ
『リセット』は、垣谷美雨作品の中でもかなり幅広い人にすすめやすい一冊だと思います。
特に合いそうなのは、次のような人です。
まず、「人生をやり直したい」と一度でも思ったことがある人。
これはかなり広い条件ですが、この作品の入口としては一番分かりやすいです。
過去に戻れたら、今よりもっといい人生になるのではないか。
そう考えたことがあるなら、きっと引っかかる場面があるはずです。
次に、タイムスリップ設定は好きだけれど、恋愛中心の軽い話よりも、大人が読んでしっかり考えられる作品を探している人にも向いています。
『リセット』は非現実的な設定を使いながら、扱っている悩みはとても現実的です。
だから「ファンタジーっぽすぎるのは苦手」という人でも入りやすいと思います。
また、オーディブルで聴く作品を探している人にもおすすめです。
三人の人生が交差しながら進むので、続きが気になって止まりにくいタイプの作品です。
通勤中や家事の時間に少しずつ聴いてもいいですし、休日にまとめて聴きたくなる力もあります。
逆に、すっきり爽快なサクセスストーリーを期待すると少し違うかもしれません。
この作品は、人生の複雑さや割り切れなさもきちんと描きます。
そのぶん、聴き終えたあとに残るものが大きい小説です。
読者の「何を読むべきか」という迷いに対して、僕なりの答えを一つだけ言うなら、『リセット』は「今の人生に違和感はあるけれど、何に引っかかっているのか自分でもうまく言葉にできない人」にすすめたい作品です。
派手に人生を変える話というより、自分の中にある違和感の正体を少しずつ照らしてくれるような小説だからです。
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まとめ
オーディブルで聴いた垣谷美雨さんの『リセット』は、高校時代に戻って人生をやり直す三人の女性を描いた長編小説です。
タイムスリップという設定は分かりやすく惹きがありますが、この作品の魅力はそこだけではありません。
人生をやり直したら本当に幸せになれるのか。そもそも幸せとは何なのか。結婚、仕事、友情、家族、自分らしさ。
そうしたテーマを、読みやすい物語の中で丁寧に掘り下げていくところに、この作品の強さがあります。
僕が『リセット』を聴いて感じたのは、「過去に戻りたい」と思う気持ちの裏には、「今の自分を少しでも変えたい」という願いが隠れているのかもしれない、ということでした。
だからこの作品は、昔を懐かしむ小説というより、今の人生を見つめ直す小説として心に残ります。
垣谷美雨さんの作品が好きな人はもちろん、オーディブルで「最後まで飽きずに聴けて、しかもちゃんと考えさせられる作品」を探している人にもおすすめです。
「あのときに戻れたら」と考えたことがあるなら、一度『リセット』を聴いてみてください。
聴き終えたあと、過去よりもむしろ“これからどう生きたいか”を考えたくなるはずです。
パーマリンク候補をほかにも挙げるなら、こんな形も使いやすいです。
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