
「推し活って、どうしてこんなにも人を夢中にさせるんだろう。」
僕は以前から、そんなことを何となく考えていました。
アイドルや俳優、アニメ、ゲームなど、誰かを応援する「推し活」は今や当たり前の文化です。
その一方で、熱狂が行き過ぎてしまうニュースを見るたびに、「人はなぜここまで誰かを信じられるのか」と不思議にも感じていました。
そんな疑問に、一つの答えをくれたのが、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』です。
この作品は単なる「推し活」を描いた小説ではありません。
人はなぜ物語を信じるのか。
なぜ孤独なときほど何かに救いを求めるのか。
そして、その気持ちは誰かに利用されることもあるのか。
そんな現代社会の本質を、とてもリアルに描いています。
オーディブルでは岩崎了さんの落ち着いた朗読も作品の空気感によく合っていて、長編ながら最後まで夢中になって聴くことができました。
今回はネタバレなしで、『イン・ザ・メガチャーチ』はどんな人におすすめなのか、実際にオーディブルで聴いた感想を交えながら紹介します。
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『イン・ザ・メガチャーチ』はどんな小説?
『イン・ザ・メガチャーチ』は、朝井リョウさんらしい鋭い社会観察が詰まった長編小説です。
物語は、まったく異なる人生を歩む3人の視点で進んでいきます。
・ファンダムビジネスを仕掛ける40代の男性
・居場所を求める大学生
・推しを失い、人生の支えを見失った30代の女性
最初はそれぞれ別々の物語に見えます。
「どうつながるんだろう?」
と少し戸惑うかもしれません。
実際、僕も最初は登場人物が多く、少し集中しづらく感じました。
しかし、読み進めるほど少しずつ点と点が線になり、物語全体が一つの大きなテーマへ向かって収束していきます。
そこから一気に面白くなり、オーディブルでも続きが気になって再生を止められませんでした。
朝井リョウさんは、人の心理を描くのが本当に上手な作家だと改めて感じました。
推し活を描きながら「人はなぜ信じるのか」を問いかける作品
この作品を読んで最も印象に残ったのは、「推し活」を否定も肯定もしないところです。
推しを応援すること自体が悪いとは描かれていません。
むしろ、人は誰でも心の支えになる存在を求めるものだという前提で物語は進みます。
読んでいて僕がずっと思っていたことが、そのまま言葉になったような感覚がありました。
「日本は宗教が生活に深く根付いている国ではないからこそ、推し活がこれほど広がっているのではないか。」
もちろん、それだけが理由ではありません。
それでも、人は自分の外側に「信じられる何か」を求める生き物なのだと、この作品を通して強く感じました。
孤独、不安、将来への迷い。
誰もが抱える心の隙間に、「物語」は自然と入り込んできます。
そして、その物語は人を救うこともあれば、縛ることもある。
本作は、その危うさを非常にリアルに描いています。
仕掛ける側の視点がとても興味深い
『イン・ザ・メガチャーチ』が他の推し活小説と違うのは、「応援する側」だけではなく、「仕掛ける側」の心理まで描いていることです。
ファンダムは自然に生まれるものではありません。
人が熱狂する仕組みを考え、物語を設計し、感情を動かしていく人たちがいます。
その考え方が非常にリアルでした。
特に印象に残ったのが、
「私たちは信者から何も搾り取ってはいない。自分自身を使い切らせてあげているだけだ」
という考え方です。
この言葉には思わず考え込んでしまいました。
時間を使う。
お金を使う。
感情を使う。
それを本人が幸せだと思えるなら、それは搾取なのか、それとも幸福なのか。
簡単には答えが出ません。
だからこそ、この作品は読後もしばらく頭から離れませんでした。
オーディブルで聴いていても、この場面では思わず再生を止めて考えてしまうほどでした。
こんな人には特におすすめ
『イン・ザ・メガチャーチ』は、派手な事件が次々に起きるエンタメ作品ではありません。
人の心理や社会の構造をじっくり描く作品です。
そのため、次のような人には特におすすめできます。
・朝井リョウ作品が好き
・推し活やファンダムに興味がある
・現代社会の空気を描いた小説を読みたい
・考察しながら読む作品が好き
・読後も長く余韻が残る作品を探している
逆に、テンポの速いミステリーや爽快なアクションを期待している人には少し合わないかもしれません。
ただ、中盤以降は物語の勢いが一気に増します。
僕自身も後半は続きが気になり、一気に最後まで聴いてしまいました。
評判どおり、終盤に向かって加速する展開はとても読み応えがあります。
オーディブルで聴くからこそ感じられる魅力
今回、僕はオーディブルで『イン・ザ・メガチャーチ』を聴きました。
ナレーターの岩崎了さんは感情を過度に乗せることなく、淡々と読み進めます。
その落ち着いた語り口が、この作品にはとても合っていました。
朝井リョウさんの文章は、感情を必要以上に説明しません。
だからこそ、朗読でも押しつけがましさがなく、自分自身で登場人物の心情を考えながら聴くことができます。
長編作品ですが、通勤や家事をしながら少しずつ聴き進められるのもオーディブルならではの魅力です。
社会派小説は難しそうと思っている人でも、耳から入ることで意外と理解しやすく感じるかもしれません。
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まとめ
『イン・ザ・メガチャーチ』は、「推し活」をテーマにした作品でありながら、本当に描いているのは人間そのものです。
孤独。
承認欲求。
居場所。
信じること。
そして、物語の力。
誰かを応援した経験がある人ならもちろん、そうではない人でも考えさせられる内容でした。
僕は読後、「推し活とは何か」という問いよりも、「人はなぜ何かを信じたいのか」という問いが心に残りました。
その答えは、この小説の中にも、そして現実の中にも簡単にはありません。
だからこそ、この作品は強く印象に残ります。
「今話題の小説を聴いてみたい。」
「考えさせられる作品に出会いたい。」
そんな人には、オーディブルで『イン・ザ・メガチャーチ』をぜひ一度聴いてみてほしいです。
きっと聴き終えたあと、自分自身の「信じるもの」について、少しだけ考える時間が生まれると思います。
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